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福岡高等裁判所 昭和47年(行タ)4号 決定

申立人 長崎県北開発振興局長

被申立人 川原林作

主文

長崎地方裁判所が昭和四二年九月二二日同庁昭和四二年(行ク)第二号行政処分執行停止申請事件につきなした執行停止決定はこれを取消す。

理由

申立人は主文同旨の決定を求め、その理由として、

一  被申立人は昭和四一年八月八日申立人が別紙目録記載の建物を同年一〇月一〇日までに除去することを命じた処分が違法であることを理由として、昭和四二年九月二日申立人を相手どつて長崎地方裁判所に右処分取消請求訴訟を提起し、同時に右処分の執行停止決定を申立て(同庁昭和四二年(行ク)第二号)、同裁判所は同年九月二二日執行停止決定をした。

二  ところが本案である前記行政処分取消請求事件につき、前記裁判所は、昭和四七年四月二一日被申立人の請求を棄却する旨の判決をしたが、被申立人の控訴により福岡高等裁判所に係属中で未だ確定していない。

三  しかしながら

(一)  前記一審判決は慎重な審理を尽した上なされたものであつて、上訴審で取消されるおそれはない。

(二)  前記除却命令による除却部分は被申立人所有建物の極めて僅かな部分にすぎず、右命令が執行されても、建物の残存部分の使用には特段の支障はない筈である。

(三)  また除却部分が僅かであるから、万一一審判決が取消されても除却部分の復旧は比較的容易であつて、除却によつて被申立人に回復できない損害を与えるものとはいえない。

したがつて行政事件訴訟法第二六条第一項に則り前記執行停止決定の取消を求める。というにある。

よつて按ずるに、疏明によれば、長崎地方裁判所が本案である行政処分取消請求事件につき申立人主張の日時主張のような判決をしたが未だ確定するに至つていないこと、右判決は四年以上の日時を費して関係者の尋問はもちろん、現場の検証、鑑定等を行ない慎重な審理の上なされたものであつて上訴審において取消されるおそれはないものと認めるのが相当であり、右のような場合は、処分の執行を停止した原決定を維持するのは相当でない事情が発生したものとして行政事件訴訟法第二六条第一項にいう事情の変更にあたるものというべく、本申立は相当であるのでこれを認容することとし、主文のとおり決定する。

(裁判官 佐藤秀 諸江田鶴雄 森林稔)

別紙目録〈省略〉

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